【FIMとは】
機能的自立度評価法(functional independence measure:FIM)のことで、(ADL)日常生活動作を点数化したものです。1983年にGrangerらによって開発されたものです。ADLの介護量を算出することができ、医学的な知識がない方でも採点できます。
運動項目と認知項目にわかれており、”しているADL”を評価することができます。類似の検査にバーセルインデックス(Barthel Index)がありますが、こちらは “できるADL” を評価することができます。
【準備】
”しているADL” なので、基本的には準備は必要ありません。評価させてもらう方の生活場面を見せていただき評価します。
【評価方法】
下記の運動項目(セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動)と、認知項目(コミュニケーション能力、社会的認知)について評価します。
運動項目 | セルフケア | 食事 |
整容 | ||
清拭 | ||
更衣上半身 | ||
更衣下半身 | ||
トイレ動作 | ||
排泄コントロール | 排尿管理 | |
排便管理 | ||
移乗 | ベッド、椅子、車椅子 | |
トイレ | ||
浴槽・シャワー | ||
移動 | 歩行・車椅子 | |
階段 | ||
認知項目 | コミュニケーション能力 | 理解 |
表出 | ||
社会的認知 | 社会的交流 | |
問題解決 | ||
記憶 |
【評価方法】点数のつけ方
・7点(完全自立) 補助具または介助なしで「自立」して行える。
・6点(修正自立) 時間が掛かる。装具や自助具、服薬が必要。安全性の配慮が必要。
・5点(監視・準備) 監視・準備・指示・促しが必要。
・4点(最小介助) 手で触れる以上の介助は必要ない。75%以上は自分で行う。
・3点(中等度介助) 手で触れる以上の介助が必要。50%〜75%未満は自分で行う。
・2点(最大介助) 25%〜50%未満は自分で行う。
・1点(全介助) 25%未満しか自分で行わない。
【判定】
最低点 18点 / 最高 126点
1点 = 介護時間 1.6分 と設定。110点以上あれば 介護時間 0分 となります。
1週間以内に10点以上低下すると、 ”急性増悪” とみなします。
【項目の解説】
運動項目(13項目)
食事:適切な食具を使用して食事を摂取する能力。
整容:顔洗い、歯磨き、髭剃り、髪の手入れなどの身だしなみを整える能力。
入浴:全身を洗う能力。
更衣(上半身):上半身の衣服を着脱する能力。
更衣(下半身):下半身の衣服を着脱する能力。
排泄管理(尿):尿の排泄を適切に管理する能力。
排泄管理(便):便の排泄を適切に管理する能力。
トイレ動作:トイレへの移動、衣服の着脱、排泄、清拭を含む一連の動作を行う能力。
移乗(ベッド・椅子・車椅子):ベッド、椅子、車椅子間の移動能力。
移乗(トイレ):トイレへの移動能力。
移乗(浴槽・シャワー):浴槽やシャワーへの移動能力。
歩行/車椅子:歩行または車椅子での移動能力。
階段昇降:階段の昇降能力。
認知項目(5項目)
理解:口頭または非口頭のコミュニケーションを理解する能力。
表出:口頭または非口頭で意思を伝達する能力。
社会的交流:適切な社会的行動を維持する能力。
問題解決:日常生活での問題を解決する能力。
記憶:指示、行動、出来事を記憶し、適切に応答する能力。
各項目の評価は、完全自立(7点)から全介助(1点)までの7段階で行われます。この評価により、患者の自立度や介助の必要性を客観的に把握することが可能です。
【ふかぼりコラム】バーセルインデックスとの違い
日常生活動作(ADL)の評価において、FIM(Functional Independence Measure)とバーセルインデックス(Barthel Index)は広く使用されています。しかし、これらの評価法には明確な違いが存在します。以下に、両者の特徴と相違点を詳しく解説します。
評価項目の数と内容
FIM:18項目で構成され、13の運動項目(食事、整容、入浴、更衣、トイレ動作、移乗、歩行、階段昇降など)と5つの認知項目(理解、表出、社会的交流、問題解決、記憶)から成ります。
バーセルインデックス:10項目で構成され、主に基本的なADL(食事、移動、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、着替え、排便・排尿の管理)を評価します。
採点方法
FIM:各項目を1点(全介助)から7点(完全自立)の7段階で評価し、合計点は18点から126点となります。
バーセルインデックス:各項目を0点から5点、10点、または15点で評価し、合計点は0点から100点となります。
評価の焦点
FIM:患者が「実際に行っているADL」を評価し、日常生活での実際の自立度を測定します。
バーセルインデックス:患者が「できるADL」を評価し、最大限の能力を発揮した際の動作能力を測定します。
適用範囲と使用目的
FIM:運動機能と認知機能の両方を詳細に評価するため、リハビリテーション病棟などでの包括的な評価に適しています。
バーセルインデックス:基本的なADLの評価に特化しており、短時間での評価が可能なため、迅速なスクリーニングや大規模調査に適しています。
まとめ
FIMとバーセルインデックスは、どちらもADL評価の重要なツールですが、評価項目、採点方法、評価の焦点に違いがあります。目的や状況に応じて、適切に使い分けることが求められます。
【参考・引用】
・Liu M他. Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)and Functional Independence Measure(FIM)and their practical use. In:Chino N, ed. Functional Assessment of Stroke Patients: Practical Aspects of SIAS and FIM. Tokyo:SplingerVerlag;1997. p.17–139.
・Tsuji T, Sonoda S, Domen K, Saitoh E, Liu M, Chino N. ADL structure for stroke patients in Japan based on the functional independence measure. Am J Phys Med Rehabil 1995;74:432/438.