VAS(Visual Analogue Scale)とは?日本でも広く使われる痛みの評価基準と測定方法をわかりやすく解説【みんなの評価.com】

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VAS(Visual Analogue Scale)とは?

VAS(Visual Analogue Scale)は、痛みの強さを一本の直線上で評価する疼痛スケールです。
一般的には10cmの直線を用い、左端を「痛みなし」、右端を「耐えられない最大の痛み」として、患者さんが感じている位置に印をつけます。

数値ではなく「位置」で表現するため、痛みの微妙な変化を捉えやすいことが特徴です。

参考文献
Huskisson EC. Measurement of pain. Lancet. 1974.

VASの特徴(どんなときに向いている?)

  • 痛みの変化を連続的に評価できる
  • 研究・臨床試験でよく用いられる
  • 治療前後の比較に適している

一方で、記入や理解に一定の認知機能・視覚的理解が必要なため、対象者を選ぶ側面もあります。

採点と判定の考え方

VASには明確な「公式カットオフ」はありませんが、臨床では以下のような目安が使われることがあります。

  • 0〜30mm:軽度の痛み
  • 31〜60mm:中等度の痛み
  • 61mm以上:強い痛み

ただし、VASは個人内変化(before / after)を見る評価として使う意識が重要です。

📊 疼痛評価を「点数」で終わらせないために

VASは変化を捉えやすい一方、評価→共有→介入の整理が重要です。
評価スケールの使い分けを体系的に学ぶと、現場がかなり楽になります。

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VASの注意点(NRSとの違い)

  • 高齢者・小児・認知機能低下がある場合は理解が難しいことがある
  • 視力・巧緻動作の影響を受けやすい
  • 口頭での即時評価には向かない

そのため、実臨床ではNRSと使い分ける、あるいは併用されることが多いです。

関連する疼痛評価スケール

NRS(Numeric Rating Scale)
McGill Pain Questionnaire(MPQ)

NRS(Numeric Rating Scale)とは?

NRS(Numeric Rating Scale)は、痛みの強さを0から10の数値で評価する方法であり、患者が自身の痛みを直感的に表現できるスケールとして広く使用されている。0は「痛みなし」、10は「考えられる最も強い痛み」を意味する。NRSは、視覚的なスケール(VAS)と異なり、患者が口頭または書面で直接数値を伝えるため、簡便で迅速に評価できるのが特徴である。特に、高齢者や視覚障害のある患者にも適用しやすい。

参考
Jensen MP, et al. The validity of the Numeric Rating Scale as a measure of chronic pain intensity. Pain. 1994.

NRSの強み

  • 口頭で実施できる(紙や線を引く必要がない)
  • 繰り返し評価に向く(治療前後・時間経過の比較がしやすい)
  • 多職種で共有しやすい(記録が「数値」なので伝わりやすい)

歴史

NRSは、20世紀半ばから疼痛評価に使用され始めたが、本格的に臨床研究に取り入れられたのは1980年代以降である。視覚的評価(VAS)やカテゴリカルスケール(例:「軽い」「中等度」「強い」)と比較して、NRSはよりシンプルかつ定量的な測定が可能であるため、広く普及した。特に、慢性痛や術後痛の評価ツールとして、世界中の医療機関で標準的に使用されている。

参考文献
Downie, W. W., et al. (1978). Studies with pain rating scales. Annals of the Rheumatic Diseases, 37(4), 378-381.

開発の背景

NRSの開発背景には、既存の痛み評価スケールの限界があった。VASは視覚的なスケールを必要とし、一部の患者には理解しにくいという問題があった。また、カテゴリカルスケールは痛みの程度を言葉で分類するが、患者ごとの解釈が異なるため、正確な評価が難しい。これらの課題を解決するために、NRSは**「直感的な数値評価」**を用いることで、より簡単で再現性の高い方法として開発された。

参考文献
Farrar, J. T., et al. (2001). Clinical importance of changes in chronic pain intensity measured on an 11-point numerical pain rating scale. Pain, 94(2), 149-158.

実施方法(準備〜質問例)

まず患者さんに、次のように基準を統一して説明します。
「0は痛みなし、10は今までで一番強い痛み(想像できる最大の痛み)です。今の痛みは何点ですか?」

よく使う質問例(目的に応じて使い分け)
・「の痛みは何点ですか?」(現在痛)
・「過去24時間で一番強かった痛みは何点ですか?」(最大痛)
・「動いたときの痛みは何点ですか?」(動作時痛)

参考
Breivik H, et al. Assessment of pain. Br J Anaesth. 2008.

採点のポイント(落とし穴)

  • 同じ条件で聞く:安静時/動作時、時間帯などを揃える
  • 患者の理解を確認:「10=最大」の意味が共有できているか
  • 数値だけで終わらせない:痛みの部位・性状・誘因・ADL影響も併記

参考
Williamson A, Hoggart B. Pain: a review of three commonly used pain rating scales. J Clin Nurs. 2005.

判定の目安(軽度・中等度・強い痛み)

施設や領域で運用は異なりますが、ひとつの目安として次のように整理されることが多いです。

  • 0〜3:軽度の痛み(生活への影響が比較的小さい)
  • 4〜6:中等度の痛み(活動・睡眠に支障が出る可能性)
  • 7〜10:強い痛み(早めの介入・再評価が必要になりやすい)

参考
Jensen MP, et al. The measurement of clinical pain intensity. Pain. 1986.

📌 痛み評価の“次”に:学び直し・現場の整理に

NRSは「点数をつける」だけだと活かしにくいです。
評価→記録→共有→介入→再評価の流れを、チームでそろえると強いです。

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項目の解説(数値+背景をセットで)

NRSは「数値がすべて」ではありません。同じ5点でも人によって意味が違うことがあるため、背景の情報を一緒に押さえると読み違いが減ります。

  • 急性痛か慢性痛か:介入の優先順位が変わる
  • 痛みの継続時間:持続痛/間欠痛で評価の取り方が変わる
  • 心理的要因:不安・抑うつ・睡眠の影響で増幅することがある
  • ADLへの影響:歩行・更衣・起き上がり等の具体的困りごと

参考
Turk DC, Melzack R. Handbook of Pain Assessment. Guilford Press. 2011.

現場で使うコツ(とにかくこれだけ)

  • 評価の前に基準(0と10)を毎回そろえる
  • 安静/動作時を分けて聞く(可能なら)
  • 介入後は同じ聞き方で再評価する
  • 点数+一言(部位・性状・生活影響)をカルテに残す

関連ページ(疼痛評価)

VAS(Visual Analogue Scale)
McGill Pain Questionnaire(MPQ)

【ふかぼりコラム①】痛みに強いのはどんな人?

「痛みに強い人」と聞いて、どのようなイメージを持つだろうか? 一般的には、アスリートや軍人など、厳しい環境に身を置いている人々が痛みに強いと考えられている。実際に、研究によると、アスリートは一般人よりも痛みの耐性が高いことが分かっている。

これは、トレーニングを通じて痛みを克服する機会が多いため、脳が痛みに適応しやすくなっているからだと考えられる。例えば、長距離ランナーは、持久的な筋肉疲労や軽度のケガに対して耐性を持ちやすく、同じ痛み刺激を受けてもNRSのスコアを低く評価する傾向がある。一方、慢性痛患者は、長期間の痛みの影響で神経が過敏になり、一般の人よりも痛みを強く感じやすくなることがある。

また、文化的要因も影響する。日本人は欧米人と比較して痛みに対する表現が控えめであり、同じ痛みでもNRSスコアが低めになりやすい。一方、欧米では「痛みは積極的に治療すべきもの」と考えられ、NRSスコアが高く出る傾向がある。こうした要素を理解すると、NRSの結果を解釈する際に「患者の背景」にも注意を払うことが重要だと分かる。

参考文献
・Tesarz, J., et al. (2012). Pain perception in athletes compared to normally active controls. Pain, 153(6), 1253-1262.
・Gagliese, L., & Melzack, R. (2003). Age-related differences in the perception of pain. Pain, 104(3), 505-511.

【ふかぼりコラム②】ロボットが痛みを評価する未来?


現在、医療のデジタル化が進み、AI技術がさまざまな分野で活躍しているが、痛みの評価にもAIが使われる未来が近づいている。通常、NRSは患者の自己申告に頼るが、これには主観的なバイアスが含まれるため、より客観的な評価方法が求められてきた。

最新の研究では、AIを活用した痛み評価システムが開発されており、表情の変化、声のトーン、心拍数などの生体情報を解析することで、患者の痛みを数値化する試みが行われている。例えば、表情認識技術を用いたシステムでは、顔の微細な筋肉の動きを検出し、痛みの強さをリアルタイムで推測する。これは、コミュニケーションが難しい高齢者や意識障害のある患者にとって特に有用だ。

また、AIが患者の痛みの変化を継続的にモニタリングし、適切な鎮痛剤の投与をアシストするシステムも研究されている。今後、NRSがAIと融合し、より客観的で精度の高い痛み評価が可能になることで、医療の質が大きく向上するかもしれない。

参考文献
・Hammal, Z., & Cohn, J. F. (2014). Automatic pain intensity estimation using facial expression analysis. IEEE Transactions on Affective Computing, 5(4), 431-443.
・Werner, P., et al. (2019). Automatic pain assessment: A survey on existing and proposed technologies. Pain Reports, 4(1), e732.

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