VAS(Visual Analogue Scale)とは?日本でも広く使われる痛みの評価基準と測定方法をわかりやすく解説【みんなの評価.com】 -

VAS(Visual Analogue Scale)とは?日本でも広く使われる痛みの評価基準と測定方法をわかりやすく解説【みんなの評価.com】

【VASとは】

VAS(Visual Analogue Scale)は、患者が自覚する痛みの強さを数値化する評価方法である。通常、10cmの水平または垂直の直線を用い、「痛みなし(0)」から「最も強い痛み(10)」までの範囲で患者が自己評価する。VASは、主観的な痛みを客観的に測定する手段として、医療やリハビリテーション、心理学の分野で広く用いられている。
参考文献
Huskisson, E. C. (1974). Measurement of pain. The Lancet, 304(7889), 1127-1131.

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歴史

VASは1970年代に英国の医師エドワード・ハスキソン(E. C. Huskisson)によって開発された。当初は、慢性疾患の疼痛評価や薬物治療の効果を測定するために使用されたが、その後、心理学やスポーツ医学など幅広い分野に応用された。現在では、痛みだけでなく、不安や疲労、ストレスレベルの評価にも活用されている。
参考文献
Huskisson, E. C. (1974). Measurement of pain. The Lancet, 304(7889), 1127-1131.

開発の背景

VASの開発背景には、「痛みは主観的であり、数値化しにくい」という課題があった。従来の「軽い・中程度・強い」といった言葉による評価では個人差が大きく、客観的なデータとして扱うのが困難だった。そこで、直線を用いて連続的なスケールで評価する方法が考案された。これにより、患者ごとの変化を定量的に比較できるようになり、臨床研究にも活用されるようになった。
参考文献
Wewers, M. E., & Lowe, N. K. (1990). A critical review of visual analogue scales in the measurement of clinical phenomena. Research in Nursing & Health, 13(4), 227-236.

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【準備】

VASを使用する際には、10cmのスケールを準備し、患者が自由に印をつけられる環境を整える。デジタル版では、タブレットやPC画面上にスライダーを配置することもある。評価前に、患者にVASの目的と使用方法を簡単に説明し、過去の評価と比較しやすいように同じ環境で測定することが望ましい。
参考文献
Bijur, P. E., Silver, W., & Gallagher, E. J. (2001). Reliability of the visual analog scale for measurement of acute pain. Academic Emergency Medicine, 8(12), 1153-1157.

採点のポイント

VASの採点は、患者が示した位置を測定し、0から10のスコアに変換する。

重要なポイントは以下の通り:

  • 正確な測定:スケールの開始点(0cm)から患者のマークまでの距離をミリ単位で測定。
  • 一貫した評価:同じ条件で測定し、個人差を最小限に抑える。
  • 患者の理解を確認:VASの意味を正しく伝え、主観的な痛み評価が適切に行われるようにする。

参考文献
de C Williams, A. C., & Davies, H. T. O. (1996). The use of visual analogue scales for pain measurement: A review of their reliability and validity. Pain, 66(1), 3-7.

【判定】

VASの結果は、以下の基準で判定されることが多い。

  • 0~1:痛みなし
  • 2~4:軽度の痛み
  • 5~6:中等度の痛み
  • 7~10:強い痛み

判定結果は、患者の治療方針を決定する上で重要な指標となり、鎮痛剤の投与やリハビリ計画の調整に活用される。

参考文献
Jensen, M. P., Karoly, P., & Braver, S. (1986). The measurement of clinical pain intensity: A comparison of six methods. Pain, 27(1), 117-126.

【項目の解説】

VASによる痛みの評価には、単にスコアを読むだけでなく、患者の状態を多角的に考慮する必要がある。

  • 痛みの種類:慢性痛(関節痛、神経痛)と急性痛(外傷、術後痛)では、VASスコアの解釈が異なる。
  • 痛みの持続時間:一時的な痛みか、持続する痛みかで治療方針が変わる。
  • 心理的要因:不安やストレスが痛みを増強することがあり、VASスコアが過大評価される可能性もある。
  • 比較評価:同じ患者の異なる時点でのVASスコアを比較し、治療の効果を判断する。

参考文献
Turk, D. C., & Melzack, R. (2011). Handbook of Pain Assessment. Guilford Press.

【ポイント】

VASは簡便で迅速な評価方法だが、以下のポイントに注意することでより正確な評価が可能になる。

  • 個人差を考慮:同じスコアでも、患者によって痛みの感じ方が異なる。
  • 継続的な測定:経時的に測定し、痛みの変化を追跡することが重要。
  • 心理社会的要因を評価:痛みは身体的要因だけでなく、精神的・環境的要因の影響も受ける。

参考文献
Jensen, T. S., & Baron, R. (2003). Translation of symptoms and signs into mechanisms in neuropathic pain. Pain, 102(1-2), 1-8.

【ふかぼりコラム①】痛みは文化によって違う?

興味深いことに、VASスコアは文化的背景によっても影響を受ける。例えば、日本人は欧米人と比較して痛みを我慢する傾向があり、同じ痛みでも低めのスコアをつけることが報告されている。一方、欧米では「痛みは治療すべきもの」という意識が強く、スコアが高くなる傾向がある。これは、医療者がVASを解釈する際に考慮すべき重要な点である。

参考文献
Gagliese, L., & Melzack, R. (2003). Age-related differences in the perception of pain. Pain, 104(3), 505-511.

【ふかぼりコラム②】動物の痛みもVASで測れる?


人間の痛み評価に使われるVASだが、近年、動物の痛みを評価する方法としても応用されている。獣医療では、犬や猫の表情や動作を観察し、VASスコアに換算する試みが進められている。AI技術と組み合わせることで、より正確な動物の痛み評価が可能になるかもしれない。

参考文献
Holton, L. L., et al. (1998). Development of a behaviour‐based scale to measure acute pain in dogs. Veterinary Anaesthesia and Analgesia, 25(1), 27-37.

その他の 疼痛評価

NRS(Numeric Rating Scale)

McGill Pain Questionnaire(MPQ)

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