PHQ-9とHAM-Dの違い|どちらを使う?評価方法・対象・使い分けを徹底比較【医療職向け】

tools

PHQ-9とHAM-Dは、どちらも抑うつ症状の評価に使われる代表的な評価尺度です。

ただし、PHQ-9は患者さん本人が回答する質問票であり、HAM-Dは医療者が面接を通して評価する尺度です。

そのため、どちらも「うつ症状を評価する尺度」ではありますが、使いやすい場面や評価の目的は異なります。

この記事でわかること

  • PHQ-9とHAM-Dの違い
  • それぞれの特徴と使い分け
  • リハビリや病棟で使うときの注意点
  • 参考文献とおすすめ書籍

📌 30秒でわかる!どの評価尺度を選ぶ?

知りたいこと おすすめ評価
うつ症状を短時間で確認したい PHQ-9
うつ病の重症度を詳しく評価したい HAM-D
不安症状を評価したい GAD-7
患者さん自身の気持ちを詳しく知りたい BDI
回復期リハビリテーション病棟 PHQ-9
精神科で詳しく評価したい HAM-D

迷ったら…
✔ 外来・病棟・回復期・在宅ならPHQ-9
✔ 精神科・詳しい重症度評価ならHAM-D
✔ 不安が主症状ならGAD-7

この記事の結論

PHQ-9は「短時間で抑うつ症状を把握したい場面」に、HAM-Dは「医療者が詳しく重症度を評価したい場面」に適しています。どちらも診断を行うものではなく、目的に応じて使い分けることが重要です。

PHQ-9とHAM-Dの違い【結論】

結論からいうと、短時間で抑うつ症状を確認したい場合はPHQ-9医療者が詳しく重症度を評価したい場合はHAM-Dが使いやすいです。

PHQ-9は本人記入式で、外来・病棟・在宅・リハビリ場面などでも導入しやすい評価です。一方、HAM-Dは医療者が面接を行い、抑うつ症状をより詳しく確認する評価です。

簡単に使い分けるなら

  • PHQ-9:スクリーニング、経過確認、一般病棟、回復期、在宅で使いやすい
  • HAM-D:精神科、研究、治療効果判定、詳しい重症度評価で使いやすい

ただし、どちらの評価も点数だけで診断を行うものではありません。診断や治療方針は、医師が病歴、症状、身体疾患、薬剤、生活背景などを含めて総合的に判断します。

PHQ-9とHAM-Dを20項目で比較

比較項目 PHQ-9 HAM-D
正式名称Patient Health Questionnaire-9Hamilton Depression Rating Scale
日本語名患者健康質問票9項目ハミルトンうつ病評価尺度
開発者KroenkeらHamilton
発表年2001年1960年
評価対象抑うつ症状抑うつ症状
評価者患者本人医療者
評価方法質問票面接
項目数9項目17項目(代表)
実施時間約3〜5分15〜30分
採点範囲0〜27点0〜52点(17項目版)
スクリーニング★★★★★★★★☆☆
重症度評価★★★★☆★★★★★
治療効果判定★★★★☆★★★★★
経過観察★★★★★★★★★☆
回復期病棟★★★★★★★☆☆☆
一般病棟★★★★★★★★☆☆
在宅医療★★★★★★★☆☆☆
精神科★★★★☆★★★★★
研究利用★★★★☆★★★★★
こんな人におすすめ短時間で抑うつ症状を把握したい場合詳細な重症度や治療効果を評価したい場合

一般病棟や回復期リハビリテーション病棟では、短時間で実施できるPHQ-9が導入しやすい場面が多いでしょう。一方、精神科や専門外来で重症度や治療効果を詳しく評価する場合にはHAM-Dが適しています。どちらが優れているということではなく、目的に応じて選択することが重要です。

PHQ-9とHAM-Dのカットオフ値の違い

PHQ-9とHAM-Dでは点数の付け方が異なるため、同じ点数でも意味は異なります。代表的な重症度分類を比較すると次のようになります。

重症度 PHQ-9 HAM-D(17項目版)
正常〜最小 0〜4点 0〜7点
軽度 5〜9点 8〜16点
中等度 10〜14点 17〜23点
中等度〜重度 15〜19点 24点以上
重度 20〜27点 24点以上

※注意:PHQ-9とHAM-Dは採点方法や目的が異なるため、単純に点数同士を比較することはできません。重症度の目安として参考にしてください。

PHQ-9とは?

PHQ-9は、Patient Health Questionnaire-9の略で、抑うつ症状を9項目で確認する評価尺度です。

患者さん本人が質問に回答する形式で、短時間で実施しやすいことが特徴です。外来や一般病棟だけでなく、回復期リハビリテーション病棟、在宅医療、訪問リハビリなどでも活用しやすい評価です。

PHQ-9では、過去2週間の状態について、興味や喜びの低下、気分の落ち込み、睡眠、疲労感、食欲、集中力、自責感、動作や会話の変化、自傷に関する考えなどを確認します。

点数化しやすく、経時的な変化を追いやすいため、スクリーニングだけでなく、介入前後の変化を確認する目的でも使いやすい評価です。

ただし、睡眠障害、疲労感、食欲低下などは、身体疾患や入院環境、薬剤の影響でも生じます。そのため、点数だけで判断せず、身体状態や生活背景と合わせて解釈することが大切です。

詳しい採点方法やカットオフについては、以下の記事で解説しています。

HAM-Dとは?

HAM-Dは、Hamilton Depression Rating Scaleの略で、ハミルトンうつ病評価尺度とも呼ばれます。

医療者が面接を通して、抑うつ気分、罪責感、自殺念慮、不眠、不安、身体症状、活動性などを評価します。17項目版がよく知られており、うつ病の重症度評価や治療経過の確認に用いられます。

PHQ-9と比べると実施に時間がかかりますが、患者さんの表情、話し方、訴えの内容、面接中の反応なども含めて評価できる点が特徴です。

一方で、HAM-Dは評価者の知識や面接技術が結果に影響しやすい評価でもあります。評価者間のばらつきを減らすためには、評価基準を確認し、一定のトレーニングを行うことが望ましいです。

HAM-Dの採点基準や評価方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

PHQ-9とHAM-Dの違いを徹底比較

ここからは、PHQ-9とHAM-Dの違いを比較しながら、それぞれの特徴について詳しく解説します。

① 評価方法の違い

最も大きな違いは、誰が評価するかです。

PHQ-9HAM-D
評価者患者さん本人医療者
方法質問票に回答面接しながら評価

PHQ-9は患者さん自身が回答するため、短時間で実施でき、多人数を対象としたスクリーニングにも適しています。

一方、HAM-Dは医療者が面接を行うため、回答内容だけでなく、表情や話し方、反応なども含めて評価できます。

② 評価目的の違い

PHQ-9は主に抑うつ症状のスクリーニングや、介入前後の経過を確認する目的で使用されます。

HAM-Dは、うつ病の重症度や治療効果を評価することを目的として開発されました。

つまり、PHQ-9は「抑うつ症状があるか」を確認する入口として、HAM-Dは「現在どの程度の重症度なのか」を詳しく把握する目的で用いられることが多くあります。

③ 実施時間の違い

PHQ-9は数分で終了するため、忙しい臨床現場でも導入しやすい評価です。

HAM-Dは17項目版でも15〜30分程度かかることがあり、評価者にも一定の知識が求められます。

④ 信頼性の違い

PHQ-9は患者さん自身の主観を反映しやすい評価です。そのため、身体症状や生活環境の影響を受けることがあります。

HAM-Dは医療者が評価するため、症状を客観的に捉えやすい反面、評価者によるばらつきが生じる可能性があります。

臨床ではどう使い分ける?

一般病棟・回復期リハビリテーション病棟

回復期病棟や一般病棟では、PHQ-9の方が導入しやすいと考えられます。

リハビリテーションでは、身体機能だけでなく、意欲や活動性の低下がADLや社会復帰に影響します。PHQ-9を用いることで、抑うつ症状の変化をチームで共有しやすくなります。

精神科

精神科ではHAM-Dが広く使用されています。

症状をより詳しく評価できるため、薬物療法や精神療法の効果判定にも活用されています。

在宅リハビリテーション

在宅ではPHQ-9が使いやすいでしょう。

短時間で実施でき、利用者本人だけでなく家族との会話のきっかけにもなります。

💡臨床コラム

リハビリテーションでは、「意欲がない」と感じる患者さんに出会うことがあります。しかし、その背景には抑うつ症状が隠れていることも少なくありません。

PHQ-9を活用すると、「気分の落ち込み」「興味・関心の低下」「睡眠」「疲労感」などを客観的に確認でき、多職種との情報共有もしやすくなります。

評価尺度は診断を行うものではありませんが、「患者さんの変化に気づくきっかけ」を与えてくれる大切なツールです。

PHQ-9とHAM-Dのメリット・デメリット

PHQ-9のメリット

  • 短時間(3〜5分程度)で実施できる
  • 患者さん本人が回答するため導入しやすい
  • 外来・病棟・回復期・在宅など幅広い場面で活用できる
  • 経時的な変化を追いやすい
  • スクリーニングに適している

PHQ-9のデメリット

  • 身体症状の影響を受けやすい
  • 患者さんの理解力や回答意欲に左右される
  • 診断そのものはできない

HAM-Dのメリット

  • 抑うつ症状を詳しく評価できる
  • 面接を通して患者さんの状態を把握できる
  • 治療効果判定に活用しやすい
  • 精神科領域で広く用いられている

HAM-Dのデメリット

  • 実施時間が長い
  • 評価者の知識や経験が必要
  • 評価者間でばらつきが生じることがある

よくある質問(FAQ)

PHQ-9だけでうつ病と診断できますか?

できません。PHQ-9は抑うつ症状を評価する尺度であり、診断は医師が総合的に判断します。

リハビリ職がPHQ-9を使用してもよいですか?

施設の運用や職種の役割に従う必要がありますが、抑うつ症状に気づき、多職種へ情報共有するためのツールとして活用されることがあります。

HAM-Dは誰でも評価できますか?

HAM-Dは医療者による面接評価を前提としており、評価基準や面接技術の理解が求められます。

PHQ-9とHAM-Dは両方実施する必要がありますか?

必ずしも両方実施する必要はありません。目的に応じて使い分けます。スクリーニングにはPHQ-9、詳細な重症度評価にはHAM-Dが適しています。

PHQ-9・HAM-D・GAD-7・BDIの違い

PHQ-9とHAM-D以外にも、精神症状を評価する尺度はいくつかあります。ここでは、臨床でよく使われる4つの評価尺度の特徴を比較します。

評価尺度 評価対象 評価者 実施時間 おすすめ場面
PHQ-9 うつ症状 本人 約3〜5分 外来・一般病棟・回復期・在宅・経過観察
HAM-D うつ症状 医療者 15〜30分 精神科・詳細な重症度評価・治療効果判定
GAD-7 不安症状 本人 約2〜3分 不安障害のスクリーニング・経過観察
BDI 抑うつ症状 本人 約5〜10分 抑うつの程度を本人の主観から把握したい場合

どの評価尺度を選べばよい?

目的 おすすめ評価尺度
うつ症状を短時間で確認したい PHQ-9
うつ病の重症度を詳しく評価したい HAM-D
不安症状を評価したい GAD-7
患者さん自身の感じ方を詳しく知りたい BDI
回復期リハビリテーション病棟 PHQ-9
精神科外来 HAM-D
訪問リハビリテーション PHQ-9

それぞれの評価尺度には特徴があり、優劣ではなく目的に応じて使い分けることが重要です。例えば、一般病棟や回復期リハビリテーション病棟ではPHQ-9が導入しやすく、精神科領域ではHAM-Dが詳しい評価に役立ちます。不安症状が主体であればGAD-7、患者さん自身の主観的な抑うつ症状を詳しく把握したい場合にはBDIも有用です。

各評価尺度の詳しい使い方については、それぞれの解説記事もご覧ください。

おすすめ書籍

PHQ-9やHAM-Dは評価尺度ですが、点数だけでは患者さんの状態を十分に理解できません。抑うつ症状の背景や診断の考え方まで学ぶことで、評価結果をより臨床へ活かせるようになります。ここでは、医療従事者におすすめの書籍を紹介します。

📘 標準精神医学 第9版 ★★★★★

PHQ-9やHAM-Dを使う前に、「うつ病とは何か」を体系的に理解したい方におすすめです。精神科以外の医療職にも読みやすく、抑うつ症状の理解が深まります。

¥7,480 (2026/07/05 05:54時点 | Amazon調べ)

📗 DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル ★★★★★

PHQ-9やHAM-Dは診断ではなく評価尺度です。診断基準との違いを理解したい方におすすめです。辞書のように使える一冊です。

¥23,100 (2026/07/05 05:56時点 | Amazon調べ)

📙 精神症候学  ★★★★☆

精神症状をより深く理解したい医療職向けの名著です。専門的な内容ですが、長く手元に置いて学べる一冊です。

¥9,020 (2026/07/05 05:57時点 | Amazon調べ)

▶ 理学療法士・医療従事者におすすめの医学書・参考書一覧はこちら

PHQ-9とHAM-Dはどちらを選ぶ?

PHQ-9とHAM-Dは優劣を比較する評価尺度ではなく、目的に応じて使い分ける評価尺度です。

目的 おすすめの評価 理由
抑うつ症状を簡単に確認したい PHQ-9 短時間で実施でき、スクリーニングに適している
介入前後の変化を確認したい PHQ-9 経時変化を追いやすい
重症度を詳しく評価したい HAM-D 面接による詳細な評価が可能
精神科で治療効果を判定したい HAM-D 精神科領域で広く利用されている
回復期リハビリテーション病棟 PHQ-9 短時間で実施でき、多職種で共有しやすい
訪問リハビリ・在宅 PHQ-9 利用者負担が少なく継続評価しやすい

PHQ-9とHAM-Dの選び方

抑うつ症状が気になる患者さん

   ↓
短時間で確認したい
   ↓
✅ PHQ-9

────────────────

詳しい重症度評価が必要
   ↓
✅ HAM-D

────────────────

精神科へ紹介・治療効果判定
   ↓
✅ HAM-D

症例① 回復期リハビリテーション病棟

70歳代男性。脳梗塞後1か月。

身体機能は改善しているものの、リハビリへの参加意欲が低下し、「何をやっても意味がない」と話すことが増えていました。

PHQ-9を実施したところ抑うつ症状が疑われたため、医師へ情報共有しました。その後、薬物療法と心理的支援が開始され、リハビリへの参加状況も改善しました。

このように、PHQ-9は抑うつ症状に早期に気づくための入口として活用できます。

症例② 精神科外来

40歳代女性。うつ病で通院中。

治療開始時と1か月後にHAM-Dを実施しました。

医療者による面接評価を行うことで、睡眠状態、不安、自責感、精神運動制止などを総合的に評価でき、薬物療法の効果判定にも役立ちました。

参考文献

  • Hamilton M. A rating scale for depression. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1960;23:56-62.
  • Kroenke K, Spitzer RL, Williams JBW. The PHQ-9: Validity of a Brief Depression Severity Measure. J Gen Intern Med. 2001;16:606-613.
  • Muramatsu K, Miyaoka H, Kamijima K, et al. Performance of the Japanese version of the Patient Health Questionnaire-9.
  • American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR).
  • 日本うつ病学会. うつ病治療ガイドライン.
  • NICE guideline NG222. Depression in adults.

関連記事

まとめ

PHQ-9とHAM-Dは、どちらも抑うつ症状を評価するための有用な尺度ですが、目的や実施方法が異なります。

  • PHQ-9は本人記入式で、スクリーニングや経過観察に適している
  • HAM-Dは医療者による面接評価で、重症度評価や治療効果判定に適している
  • どちらも診断を行う尺度ではない
  • 点数だけではなく、身体状態や生活背景を含めて総合的に判断することが重要である

評価尺度は患者さんを「点数化する」ためではなく、状態を客観的に把握し、多職種で共有し、より適切な支援につなげるためのツールです。評価結果だけにとらわれず、患者さん一人ひとりの背景や生活にも目を向けながら活用していきましょう。

※本記事は医療従事者向けの情報提供を目的としています。診断や治療方針は、必ず医師の判断に基づいて行ってください。

Verified by MonsterInsights